広寒宮寓居(つきのみやによりいす)

例えば女に生まれたら 
一度は月に暮らしてもよく 
一年中セイリでもよく 
ベッドに海王星を連れ込んでも構わない 

その場合見る夢は悲しいものが多いが 
目覚めれば満ちたりて 
みずみずと透きとおる 

女 
月に棲めば一人を好み 
愛した男の大切な何物か 
胎内から取り出すようにして 
捧げようにも 
すでに月は頭上になく 
自身大地となる 
 

(2006年8月1日)


白の会・pool・[sai]合同歌会

鏡文字操る人の横顔を水に映してみたい夕暮 

新宿は三丁目にてはぐれたりこのポロシャツは甘すぎですか 


作ってみたらまったく今の自分の心象を映したものでした。 
そういうつもりでもなかったのに驚きます。 
題詠とか、「鏡→鏡文字」から出発しただけなのに何でそうなるんだろうと思います。 
夕暮で止まった時点で「終わった、この歌」と思いましたがしょうがない、いつも夕暮なのだもの。 
しかしまったく今はその器用な人の横顔しか見えないなあ。 

あとの歌は新宿駅東南口の雑踏で思いついたものですが、見失いぶりと不安があられもなくこぼれおちてしまっているような。 

 

(2005年7月30日)

 

けしざきさんに心強いプッシュをいただき、白の会・pool・[sai]合同歌会にお邪魔しました。 
からんさんや石川美南さんにお会いできたのはもちろん、高原英理さん・佐藤弓生さんご夫妻にもお目にかかれて、それだけでもう舞い上がっちゃいました。 
しかも世話人(?)の神保さんともうおひとかたが超フレンドリー。 

がちがちに緊張したのでテンションが低いんだか高いんだかわからない状態になりました。

でも楽しかったです。癖になりそうな楽しさ。 

以前横浜カウンセリングセンターの夏の研修によく通っていたのですが、

講師の粟飯原(あわいばら)先生が詩や俳句を題材にエンカウンターをなさっていて、

それとよく似た感じがしてなじめました。 

どこかに所属できたらいいなとちょっと思いました。 

 


2005年7月 ミクシィ日記から

こっそりと日記を借りるこっそりとカレーに砂糖いれるみたいに  


すっぱいねデラのぶどうの粒ごとに育ちきらない夏の哀しみ 

遅い午後を息子が眠るふとんには浅く発酵している夏が 

パパッパパッパッパ子どもはボタンかけるときむずかしいかお 今もむかしも 

優劣はつけられないの先生で(コーンシリアル)お母さんなの 

  
自己完結しやすい人っているでしょう?庭のもろきゅう収穫のとき 

いじわるのワクチン接種済ませます背中の羽のあったとこです 


この夏はだれのものにもならなくて 
              はるかな水辺に遊んでいました 

ぼら納屋に南海生まれ黒潮育ち口の小さい魚が集う 
  
にじまないさよならかいてほしいならうみのゆうびんきょくにおいでよ 

 

                      (2005年7月31日)


2005年8月 ミクシィ日記から

こころもち抱かれたような顔をして私の安心うばっていった 

はりついた笑顔のままで別れたが空ほど高くなかったような 

「冴え返る」まるで名前を呼ぶように弥生ついたちみぞれに言った 

学童は遠きにありて思うものカレーうどんはぬくもりである 

そのやうに人に愛されたるならば運も太ると思ふ 冷めをり 

数学の試験監督問一の1の答えが五種類もある 

木の精であらねば知らぬ土の味ああナルニアに生まれてみたき 

小野くんが大切そうにデザートのプロセスチーズの銀紙を剥く 

圏外の少女大きく息をつくほうりだされたようなキャンプだ 

いかな世も姫であつたることのなく今生にてはいつぴきの猫 

犬のごと数ならぬ身の我ならば望みはひとつせめて「手」と君 

風の夜偶然めかして落ち合ったフロドとサムのように裸足で 

彩雲の真中に沈む一日を閉じ込めておく箱をもたない 

コピー機のうへに置かれた蜜柑あり蜜柑この寄る辺なき身に 

オルゴールだれが開けたの鳴らしたの昼間の星に歌っているの 

うつくしきひとむれ乱す一陣の風のやうなる君の発語は 

ポリ公って死語?春昼の住宅街免許取られて切符切られて 

遠くから桜見つめるロビーでは人待ち顔をつくってもいい 

 

題詠マラソン2004 2005年8月2日
 


2005年8月 ミクシィ日記から

蝉の声聞くと静かに割れてくる私と柘榴ここで降ります 

蜉蝣の羽をちぎっていちまいを飛ばして風と多摩川渡る 

自転車で橋わたるひと見送ってこれから壊れにかかります

                   (2005年8月1日)

 

沸点はメタセコイアのてっぺんに預けて君と逢っていたんだ 

昼寝から覚めるときまだ病んでおりタイドプールでうつぼと話す 

看護婦がだいたかおるの声で呼ぶ秋本さんは小走りで来る 

武田さんしっかりとした足取りで一礼しながら入って一礼 

何べんも呼ばれたオオツカマイさんは初老のやせた女の人です

                   (2005年8月28日)

 

 

 

 


かさかさばあさん

キラキラと舞う 
白い粉が舞う
ブラインドを通り抜けた光を受けて
頭をくぐり抜けたセーターを床に引きずりおろすあいだに
どこからわいてくるんだ
こんなたくさんの
ふかふかの
おびただしい量の
粉雪のような
この肌着の繊維の
どこにまぎれていたのか
吸い込んではいけない
息を止めて

まだまだ続く
ズボン
ズボン下
パンツ

きらきらきらきら

私よりずっと白い乳房の横の
薄ピンクのサロンパスをはがした
その裏にさえ

母はすでに粉吹き芋なのか

かさかさかさかさ

パジャマを着こんで
何を思ったのか流し台へと歩く
立ってもぶわっかさかさ
歩いてもぶわっかさかさ

足元から崩れて来ないか
命削ってないか
しかしそんな様子も自覚もないのだ母には
かさかさだけだそれを知るのは

かさかさ
かさかさばあさん





母の満足

 母は何が楽しいのか
何が望みなのか
ありがとうとぐちを同じくらいよく言い
人嫌いなくせに会えばよくしゃべる
人生をどうしたかったのか
どう生きたかったのか
そんなことを考えていると気取らせることはなかった
それとも全く考えていなかったのか
精神科の問診表の質問「性欲はありますか」と読みあげる娘に
「ないねえ」とそのまま答えていた
意味わかってんのか
二夫にまみえたが
四十過ぎには寡婦同然になった
私なら耐えられない
暇で困っちゃう
しかし母はその後四十年を一日のごとく過ごし
境界線上をさまよう一男一女を育て上げそこなった
あんなにかわいがった、世界のすべてだった、孫の、
今は顔も名前も忘れはてている
半分眠りながらひとりごとをえんえんつぶやく
誰も聞いていないが母には関係ない、多分


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